2003年頃、「住民基本台帳(カード)」というしくみがありました。インターネットで行政手続申請などができる電子政府・電子自治体の基盤ともなるものでしたが、国民全員に強制するような仕組みでは無かったためか、完全に普及したとは言い難いものでした。
2015年10月から、「マイナンバー」の通知が始まります。
住民票のある世帯の方一人一人に異なる番号が配付されます。
レンタルビデオで使うようなカードではなく、賢く使えばとても活用できる制度なので、ここであらためてこのマイナンバーについて知ることとしましょう。
そもそも、マイナンバーってどんなもの?
改正マイナンバー法の正式名称は「社会保障・税番号制度」と言い、「行政の効率化」「国民の利便性の向上」「公平・公正な社会を実現」するための制度で、住民票がある世帯ごと1人に1つずつ配られる12桁の番号が「マイナンバー」と呼ばれることから「マイナンバー制度」と呼称されています。
なお、一度決まった番号は、(番号が漏えいし、不正に使われるおそれがある場合を除き)生涯にわたって変わりません。
この2015年10月から国民に「通知カード」(手数料無料)の簡易書留発送により通知が始まり、2016年1月から「個人番号カード」と組み合わせた運用が始まります。
マイナンバーの利用は、
- 税分野(税務署などに提出する書類への記載)
- 社会保障分野(年金、医療保険、介護保険、生活保護、児童手当など)
- 災害対策分野(防災・災害対策に関する役所関係の事務)
※社会保障分野は他の分野と比べて運用開始が遅れる見込みです。
セキュリティが心配! 制度での保護措置は?
法律に規定があるもの以外に利用したり、規定された方以外の人がマイナンバーの情報を収集したりすることは禁止されています。法律に規定がある場合でもマイナンバーの情報を収集する際はマイナンバーと身元の確認が必要になります。
また、特定個人情報保護委員会(第三者機関)により、監視・監督され、情報漏洩などで違反した場合の罰則も強化されます。
セキュリティが心配! システム上での保護措置は?
行政の業務を効率化するマイナンバーですが、個人情報自体は各自治体や行政機関で管理されており、マイナンバーはそれをひもづける役割になっています。また、個人情報にアクセスできる人も行政機関で制限されています。行政機関の間での通信時も情報は暗号化されます。
将来的には
将来的(2017年頃)に「マイナポータル」というサイトで、マイナンバーの各種履歴(行政機関がいつ、“どこ・誰”と自分のマイナンバーについてやりとりしたのか、行政機関からお知らせを受ける、等)を確認できるようになるようです。
個人の方は、具体的にはいつ使うのか?
●税分野では
- 税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書などに記載
- 税務当局の内部事務 など
※個人事業の方は、確定申告の際に提出します。
●社会保障分野では
- 年金の資格取得や確認、給付
- 雇用保険の資格取得や確認、給付
- 医療保険の給付請求
- 福祉分野の給付、生活保護 など
●災害対策分野では
- 被災者生活再建支援金の支給
- 被災者台帳の作成事務 など
会社勤めの方とマイナンバー
事業者が源泉徴収票などに従業員のマイナンバーを記載したり、証券会社や保険会社などは法定調書に記載したり、厚生年金の裁定請求の際に年金事務所に提示します。
マイナンバーをその内容に含む個人情報は「特定個人情報」となるので、厳重に管理が必要です。
ちなみに、源泉徴収票は従来のA6サイズからA5サイズに変更されます。同様に、マイナンバーを取り扱う書類はマイナンバーを記入する欄が増えるはずなので、帳票類の内容が変更になります。
事業者の方は、具体的にどうするのか?
●従業員からマイナンバーを取得する時
マイナンバーを従業員等から取得できるのは法令で定められた場合だけで、それ以外は取得できません。利用目的の特定と明示を従業員に行い、従業員の本人確認を厳格に行う必要があります。代理人を経由してマイナンバーを入手する場合は、代理人の本人確認なども必要になります。
また、他人のマイナンバーをコピー・プリントアウト・メモをすることは「収集」にあたり、法律で限定的に認められた場合を除いて収集できません。
事務を処理する必要がある場合に限りマイナンバーを保管し続けることが可能ですが、作成義務が無くなった場合は速やかに廃棄しないといけません。
●安全管理措置に気をつけるマイナンバーは、組織的(基本方針の策定、取扱規程等の策定)、人的(管理の管理・教育)、物理的(パーティション設置、鍵付棚に保管、入退室管理)、技術的に安全管理措置(PCのアクセス制限やウイルス対策ソフトで保護)を管理の行う必要があります。
法人には「法人番号」が割り振られる
株式会社など法人には、1法人に1つ指定される13桁の番号が割り振られます。これは「法人番号」といい、マイナンバーとは異なる物です。
誰でも自由に利用できる番号で、平成27年10月から登記上の住所に送付されます。
法人番号を活用して、企業情報をまとめたり、グループ企業が複数あるような会社では名寄せ作業の効率化などが見込まれます。
今回は、新たにはじまる「マイナンバー制度」を総括的にご報告しました。次回以降、この制度についての注意点をより詳細に折を見て取り上げていきたいと考えていますので、お楽しみにしてください。