クラウドサービスとは、データやソフトウェアをネットワーク経由で利用者に提供するサービスのことです。ネットワーク環境があり、インターネットに接続できる機器があれば、どの端末からでも、さまざまなサービスを利用することができます。
Microsoft Officeに代表される、文書作成ソフトや表計算ソフト、スライド作成ソフトといったオフィスツールもクラウド対応が進んでいます。
クラウドサービスにデータをアップロードすると、他の誰かと共同編集ができたり、タブレット端末やスマートフォンのアプリを経由して編集ができたりします。出張先でも移動中でも、社内にいるのと変わらない仕事ができたり、プレゼン資料をクラウドにアップロードしておいて、クライアント先で直接見てもらうこともできます。
結果として、組織内社員の作業効率は上がり、ビジネスはスピードアップします。
ただ、クラウドであるメリットは数多くありますが、使い方を誤ると失敗をすることもあります。
たとえば、
・社外秘のワードファイルを公開制限のない状態でインターネット上に公開してしまった。
・パスワードを付けて送るべきファイルをメールで別の人にパスワードなしで送ってしまった。
・USBメモリで受け取ったデータにウイルスが入っていて、全社に感染が広まってしまった。
などは、対策を十分に行なっていない場合はすぐにでも起こりそうなことです。
社員が不自由なくクラウドの利点を甘受できるためには、情報システムやネットワークに精通した専任担当者とまではいかずとも、使い方や設定方法がわかる人がクラウドサービスの管理者(社内担当者)になり、セキュリティやファイル共有、ネットワークなどのトラブルに対応できるようにすることが望ましいでしょう。
今回は、クラウド型Officeサービスのビジネスシーンでの活用例と、セキュリティ面で注意すべきポイントを確認してみます。
■クラウド型Officeサービスってどんなのがあるの?
ビジネス用途で多く流通しているクラウド型Officeサービスとしては、Office365(Microsoft)やGoogle Apps for Work(Google)があります。
※個人利用が主となるOffice Online(Microsoft)もあります。
2種のサービスを比べると、目的別に下記のような製品展開をしています。
Office365 | Google Apps for Work | |
---|---|---|
文書作成 | Word | Googleドキュメント |
表計算 | Excel | Googleスプレッドシート |
スライド作成 | PowerPoint | Googleスライド |
ファイル保管 | OneDrive(旧SkyDrive)/Share Point | Google ドライブ |
■活用例と注意すべきポイント
●文書作成
・共同編集できるファイルを共同編集者でない人にアドレスを教えて見てもらおうとしたが見えないと連絡が来た。
→共同編集者のアカウントを限定しているファイルの場合、他の人はファイルを確認できません。必要があれば、閲覧者または編集者としてアカウントを追加することができます。
・共同編集ができるようにしていたが、ファイルをコピー後ダウンロードした社員が再アップロードしたことで、データがどんどん増えていって収集がつかなくなった。
→クラウドサービスでの作業はクラウド上で行なうことが原則です。クラウドとしての使い方を社員に教育すべきでしょう。
●表計算
・アップロードしたファイルの一部にウイルスが入っていたようで、全社員の機器が感染してしまった。
→クラウドのシステムがセキュリティで守られていたとしても、何らかの理由でウイルスが侵入する可能性はあります。セキュリティソフトでの事前チェックをした方が良いでしょう。
・マクロを組み込んだエクセルファイルがクラウド上で動作しなかった。
→クラウド上では動作が保証されていません。クラウドとローカルを共用できるマクロを含んだファイルはクラウドでの利用は不適切なので、同期はしないほうが良いでしょう。
●スライド作成
・クライアント用スライドと、原価の書いた社内用スライドをわけていたが、管理不足で社内用スライドをクライアントと共有してしまった。
→社内の秘密に関わるデータは、パスワードで保護したり、保護されたフォルダに保管して限られた人しか見られないようにするのが良いでしょう。
●ファイル保管
・パンフレットや提案書などを関係者で共有するフォルダを作った。そのフォルダを丸ごと共有する設定にしたが、中に公開できないファイルが混じっていた。
→フォルダの設定を「公開」にすると、フォルダ内に公開してはいけないデータが混じっていないか確認しましょう。フォルダの公開設定は、一般公開だけではなく、一般には非公開でパスワード設定をしたり、アカウントごとに閲覧や編集を許可する設定もできます。
・データをUSBメモリでもちこんだ。ファイルがウイルスに感染していたため、被害が全体に及んだ。
→クラウドのみならず、USBメモリなどでファイルを持ち込む場合はセキュリティソフトなどでチェックする必要があります。
・ファイルを誤って消してしまった。
→ツールによってはファイルを消してしまう前の状態に復帰できる場合があります。
■利用者として大事なこと
ビジネス上でもスタンダードとなりつつあるクラウド型Officeツールですが、特に導入時にクラウドを知る、しくみを知ることが大事です。
具体的には、
・クラウドとローカル利用の違いを知り、しくみを理解すること。
・クラウドの使い方を理解すること。特に共有の方法について理解する。
・怪しいファイル、データを取り扱わない。
といったところです。
また、管理者となった方は、利用者がスムーズに業務が進められるように、環境を整備したり、ルールを作ったり、利用者の教育を実施することが以前にも増して重要になってきています。