オリンピック開催を前に、訪日する外国人旅行客が増えてきています。
円安を理由に爆買いする外国人や、マンガやアニメ、コスプレ、ゲームなどの日本のポップカルチャーが好きな外国人、和の文化や風光明媚な所にひかれる外国人など、様々な理由で日本は注目されています。
一方、訪日する外国人旅行客に対して、外国語による案内が不十分だったり宿泊先確保の制度が未整備であったり、日本の受入体制が十分整っているわけではありません。
日本で暮らしている人と外国人旅行客との間で、認識のズレが起こったり、トラブルとなる可能性があることも考慮しなくてはなりません。
今回は日本が外国人旅行客を誘致することになった経緯や、受け入れる際のセキュリティについてキーワード別に書きます。
■2003年からのインバウンド観光客を増やす試み「ビジット・ジャパン・キャンペーン」
外国人旅行客を自国へ誘致することを、「インバウンド」と言います。
日本では、国土交通省が中心となり、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」(外国人旅行者の訪日促進活動)を2003年から行っています。関係省庁および民間団体・企業がキャンペーン実施本部が海外諸国での日本旅行の広報や、国内における外国人旅行者向きインフラの整備などを行っています。
2003年というと、六本木ヒルズがグランドオープンしたり、小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられ、オレオレ詐欺が横行した時期ですね。
当時「YOKOSO! JAPAN」というスローガンで外国人訪日旅行者への歓迎を表現していました。
2005年から毎年行われているキャンペーンとして最も大規模なものは、「YOKOSO! JAPAN WEEKS」です。旧正月の期間に東アジアからの観光客に対して日本の魅力を広報しています。
国内向けにも訪日外国人旅行客向けの各種優待、パンフレット制作、コールセンター開設支援などで旅行客が観光しやすい環境作りを行っています。
そして、日本政府は2020年のオリンピックに向けて訪日外国人旅行者数を2000万人、2030年には3000万人を目標と掲げています。
国土交通省観光庁が発表した、2014年の国・地域別の訪日外国人旅行客の数及び割合によると、
総計1341万人の訪日外国人観光客のうち、
① 東アジア 892万人(66.5%)と続きます。
② 東南アジア 160万人(11.9%)
③ 北米 107万人(8.0%)
④ 欧米+ロシア 54万人(4.0%)
⑤ オーストラリア 30万人(2.3%)
国別では
① 台湾 283万人(21.1%)と続きます。 (資料は、観光庁サイト 「訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)」より引用 http://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/vjc.html
② 韓国 276万人(20.5%)
③ 中国 241万人(18.0%)
④ 香港 93万人(6.0%)
⑤ 米国 89万人(6.6%)
■キーワード別外国人観光客の傾向と、受入時のセキュリティのポイント
実際の外国人観光客の受入人数が示しているように、近隣アジア諸国からの観光客がかなり増えています。
訪日外国人が増えている背景として、
1 円安
2 日本ビザの発給要件の緩和
3 アジア諸国の経済的な成長
4 LCC(格安航空会社)の普及
5 ビジット・ジャパンをはじめとするプロモーションの成果
6 消費税免税制度の拡充
などが挙げられます。
●日本を買い尽くす勢いで爆買いする中国人
中国やインドなどの工業大国では、国内の中産階級層が拡大しています。
特に中国では輸入品に高い関税をかけていたり、子供にお金をかける家庭が多いことで、子連れ訪日旅行客が多くなっています。
個人輸入業並みのお土産品購入やによる爆買いは、日本人から見ればマナー違反となる案件やイベントに乗じた詐欺が発生しています。一部の観光客は財力はなくてもメンツを示したいという「おみやげ万引き」、偽造カードを利用した不正犯罪に手を染めることもあります。
●「民泊」に需要が高まるAirBNB
「民泊」としてのサービスとして人気のあるAirBNB(エアビーアンドビー)は、自宅やマンションに空き部屋がある人が、旅行者に有料でスペースを宿泊施設として提供する、米サンフランシスコで創業されたベンチャー企業のサービスです。
しかし、部屋数や防災・防火設備、防犯体制などの要件が課せられる旅館業法が存在する日本では、グレーゾーンに考えられます。
粗悪なゲストを防ぐためのクレジットカードとSNSを利用した認証や、宿泊するためにはホストと事前のやりとりが必要なことで、ある程度のフィルタリングはされていますが、トラブルが皆無とは言えません。
実際にゲストが騒いで近隣住民に迷惑をかける、犯罪のためにスペースを利用する、部屋を破壊される、などのトラブルが発生しています。
●外国人犯罪の検挙件数は高い水準
警察庁によると、国内の外国人犯罪の検挙件数は、平成26年が15215件となり、ピークだった平成17年に比べると1/3になっています。
犯罪別では
・窃盗事件:約6700件
・入管法違反事件:約3800件
・殺人事件:29件
といった傾向にあります。
警視庁の基準では、「我が国に存在する外国人のうち、いわゆる定着居住者(永住者、永住者の配偶者等及び特別永住者)、在日米軍関係者及び在留資格不明者を除いた外国人をいう。
」と定義され、日本に出稼ぎに来ている外国人や訪日観光客も含みます。
工業地域を中心に出稼ぎ外国人の受入施設がありますが、多くの外国人が景気に左右される不安定な雇用状況にあることもあり、犯罪に手を染めるケースもあります。
●傾向を知ってセキュリティ対策を行う
訪日外国人を含む外国人とのトラブルには、生活水準の格差や民族性、地域性など、さまざまな要因がありますが、すでに傾向が見えている事例もあり、これからも増えていく訪日外国人観光客に対して、傾向を知った上でセキュリティ対策をしていくことが求められます。